古川美術館分館 爲三郎記念館「スイスで咲いた 横井照子展」
古川美術館 分館 爲三郎記念館(愛知県名古屋市千種区)
スイスを拠点に活動した横井照子は、季節の情景や草花など自然をテーマにした色彩豊かな作品を多く手がけた画家です。
横井照子は1924年愛知県名古屋市に生まれ、その後、津島市へ移住し、幼少の頃より絵を嗜んでいました。
1949年に女子美術大学の聴講生となり、木下孝則に師事します。画業初期に当たるこのころは、師である木下孝則に影響された、色面を使った具象表現でした。しかし1953年の渡米を機に抽象絵画へと大きく転換します。日本人のアイデンティティを活かしつつ、伝統的な日本の技法を軸に抽象画をアートワークにしていきます。そこには交流のあったイサム・ノグチやマーク・ロスコなどの芸術家やアクションペインティングにも影響をうけ、色彩豊かな横井芸術を開花させました。
1959年画家サム・フランシスと結婚し、1960年36歳の時にパリへ移住、その後、1962年に活動の場をスイスに移し、さらに飛躍を遂げます。1960年代初めは重い色調の抽象画もみられましたが、スイスに移ってからは、色調は明るくなり、画面構成は洗練されていきます。そして水と卵を混ぜ合わせた塗料を用いたエッグテンペラや、油彩・水彩・リトグラフ等の多様な画材を用いて作品を手掛け、横井は自身の確固たるスタイルを確立しました。それは美しい日本の四季に感化された抒情豊かな世界観で、大胆な構図と豊かな色彩、具象と抽象を併せ持つものでした。
本展では、岐阜県恵那市の「横井照子ひなげし美術館」の協力により横井照子の70年にわたる制作活動の一端を紹介し広く社会へ横井照子の存在と魅力を発信します。90回以上の個展開催をはじめ、雑誌『文藝春秋』や『婦人之友』の装丁、菓子のパッケージといった商業デザインも手掛けるなど幅広い活躍により、美術界で確固たる地位を確立した横井照子の世界をお楽しみください。
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《Figure》
1955年 油彩、カンヴァス -
《Chrysanthemenduft Ⅱ》
1969年 油彩、カンヴァス